大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)3097号 判決 1953年10月02日

本籍

京都市東山区三条大橋東三丁目南入教業町六六六番地

住居

不定

無職

田中米吉

明治三九年一一月二五日生

右の者に対する準強盗未遂被告事件について昭和二八年六月二日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人の上告趣意は事実誤認又は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。

弁護人大塚一男の上告趣意第一点について。

所論は憲法三一条違反をいうが、その実質は事実誤認又は証拠の取捨判断を争うもので適法な上告理由とならない。

同第二点について、

被告人は控訴申立後原審裁判所から昭和二八年三月一三日に控訴趣意書を提出すべき最終日を同年四月一四日と指定した通知を受けながら、自らその期間内に控訴趣意書を提出できるような適当な時期に弁護人選任の請求をせず、同年三月二〇日自ら控訴趣意書を作成提出した。そして原審は同年五月二五日国選弁護人を選任したが、同弁護人は同年五月二六日の原審公判期日に出頭し、異議なく被告人の提出した控訴趣意書に基いて弁論しているのである。以上の次第であつて、原審が被告人の弁護人選任請求を妨げた形跡は毫も認められないのであるから、原審が所論のとおり控訴趣意書提出最終期日経過後国選弁護人を選任したことの一事を以て憲法三七条三項に違反するということはできない(昭和二五年(あ)第二一五三号同二八年四月一日大法廷判決参照)。そしてまた、原審が被告人に対し弁護人選任の照会手続をとらなかつたことは所論のとおりであるが、この点を目して憲法違反となし得ないことも亦右大法廷判例の示すところであるから論旨の理由のないことは明らかである。

なお記録を精査しても刑訴四一一条に該当する事由はない。

よつて同四〇八条一八一条により主文のとおり判決する。

右は裁判官小谷勝重、同谷村唯一郎の、原判決を破棄し、原審に差戻すべしとの反対意見を除き他の裁判官の全員一致の意見である。

裁判官小谷勝重、同谷村唯一郎の反対意見は前記大法廷判決に示した各意見の趣旨と同趣旨である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例